ゼニゴケは市街地でも見かける事ができる苔の1つで、苔の中でも苔類に分類されます。
塀や建物の裏などの陽当りが悪く湿度のある場所でよく見ることができます。
一部では「勝手に生えてくる邪魔な苔」というイメージがあり駆除の対象となっているようです。
苔テラリウムで利用されることは稀ですが、ケース内で育てることで明るい緑色の姿や仮根の伸びる様子を観察することができます。
分類(※) | 苔類 ゼニゴケ目 ゼニゴケ科 |
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育成場所 | 土上 |
日当たり | 半日陰~日陰 (苔の育つ明るさを参照) |
湿度 | 中間~湿潤 |
育ち方 | 横に広がり、ときには折り重なって育つ |
科はしだ・こけ (新装版山溪フィールドブックス)に基づく
ゼニゴケの特徴
ゼニゴケは苔類に属する苔の1種で、葉と茎の区別がない葉状態という形態の苔です。
ギンゴケなどと比べると、潰れたようなベチャッ広がっている印象がありますね。
ギンゴケなどの葉と茎が区別できる苔は茎葉体と呼びます。
葉の幅は7mm~15mm程度、葉の色は緑色~灰緑色。
ゼニゴケはしばしば葉の先端部には円錐状の器官を付けます。
これは杯状体と呼ばれる器官で、中には円盤状の無性芽が詰まっています。
無性芽が育つとクローンのゼニゴケが育つ。
この無性芽の形を小銭に例えて「ゼニゴケ」と呼ばれるようになった、とも言われています。
季節によってはヤシの木のような形をした雌器床を付けることがあります。
ゼニゴケは春と秋の2回このような器官を付けるようです。
他の苔類では年に1回しか付けないものが多いとのことなので、ゼニゴケは勢力を広げるスピードが早いのでしょう。
雌器床が成熟すると内側が膨らみ胞子を排出します(下記写真では目立った膨らみは見られません)。
雄器床は雌器床と比べると数が少なく、平らな傘のような形をしています。
自然環境下では春先に雌器床に先立って見られることがあるようです。
湿潤な環境で育ったゼニゴケは、しばしば葉状態の中央に黒い筋が見られるそうです。
ゼニゴケの見分け方
市街地で見かける葉状態の苔としてはジンガサゴケやミカヅキゼニゴケ、ハタケゴケ科の苔などがあります。
ジンガサゴケはゼニゴケよりも葉の幅5mm~7mmと小さいです。
また、ジンガサゴケは葉の縁が赤黒いことがおおいです。
ミカヅキゼニゴケは葉がゼニゴケと似ていますが、杯状体が円錐形ではなく三日月型をしている点が異なります。
ハタケゴケ科の苔は葉のサイズが小さいという点もありますが、多くはロゼッタ(放射線状に成長する育ち方)を形成します。
ゼニゴケは不規則に成長することが多いため見分ける際の参考にすることができるでしょう。
ゼニゴケの入手方法
市場にはあまり出回っていません。
単に「ゼニゴケ」と調べても除草剤が候補に出てしまうので、通販サイトなどで調べる際には「-除草 -駆除 -退治」などの除外ワードを併用するとよいでしょう。
ゼニゴケは街中でもよく見かけることができる苔なので、入手したい場合には自身で採取することになりそうです。
苔の採取には地権者などの許可が必要な点に注意してください。
採取のための許可を取るにはこちらの記事も参考にしてください。
ゼニゴケの育て方
ゼニゴケを育てる場合には密閉できる容器で管理すると良いでしょう。
鮮やかな緑色の葉や、白く大量に伸びる仮根を観察できると思います。
LEDなどの照明では雄器床や雌器床を付けにくいという報告もあるようです。
飼育下で雄器床や雌器床を観察したいのであれば自然光で育てるか、遠赤色光を当てることで発生を促す事ができるようです。
苔の育て方についてはこちらの記事も参考にしてください。
ゼニゴケの雑学
ゼニゴケは世界中に分布しており、古くから研究されてきた植物の1つです。
ゲノム解読なども進んでおり日本初のモデル生物として紹介されています。
モデル生物とは簡単に言えば実験しやすい特徴を持った生き物のことです。
つまり、どこでも入手することができる、繁殖が容易である、長期間保存ができる、ゲノム解析が進んでいる、などの特徴を持った生き物です。
モデル生物を定めることで、世界で共通してその生き物の知見を蓄積する事ができるという利点があります。
ゼニゴケの写真
参考文献
■ モデル生物としてのゼニゴケの紹介
培養方法の中で遠赤色光を使うことも記載されています
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