【苔散歩】ヒメタチゴケと雌雄異株・雌雄同株

苔散歩

2022/05/04に市内の神社を散歩していたところ、こんな苔を発見しました。
以前にも訪れたことのある場所ですが、こんなものを見かけたのは初めてです。

2022/05/04撮影

スギゴケ科の雄花盤でしょうか?

2022/05/04撮影

ウミガメちゃんと並べるとこんな感じ。
雄花盤の直径はウミガメちゃんの顔と同じぐらいなので4mm前後といえます。

ウミガメちゃんの大きさについてはこちらの記事を参照してください。

以前に訪れたときには、この苔はナミガタタチゴケだろうと、そう思っていました。

しかし、調べてみるとシフネルさんのサイトにはナミガタタチゴケは雄花盤を付けないと紹介されています。
な、なんだってー。

ナミガタタチゴケが雌雄同株で、ヒメタチゴケが雌雄異株なので、雄花盤をつけていればヒメタチゴケと断定できます。

シフネル – スギゴケ科

そもそもの話として、私は雌雄同株・雌雄異株という概念をあまりちゃんと把握していません。
というわけで、今回はこのあたりを少し掘り下げてみます。

ちゃんと苔の正体についても調べますよ。

雌雄同株・雌雄異株について

※ この章は私が拙い知識でまとめたものなので普段以上に誤りを含む可能性が高いことに注意してください。

さっそくですが、雌雄同株・雌雄異株について概要を書いてみます。

  • 1つの繋がった植物体(株)に造精器(雄: antheridia)もしくは造卵器(雌: archegonia)しか付けない植物のことを雌雄異株(しゆういしゅ: dioicous)と呼び
  • 逆に1つの植物体(株)に造精器(雄)も造卵器(雌)も付ける苔のことを雌雄同株(しゆうどうしゅ: monoicous)と呼ぶ

ということらしいです。

また、雌雄同株については更に以下の3つに分類することができるそうです。

雌雄同株の分類概要備考
雌雄共立同株(synoicous)造精器と造卵器が
同じ苞葉に混生する
資料によっては「同苞同株」
雌雄列立同株(paroicous)造精器と造卵器が
それぞれ苞葉を持ち隣接する
資料によっては「異苞同株」
雌雄独立同株(autoicous)造精器と造卵器が
別の枝に生える
資料によっては「異苞同株」

なんとな~く分かったような気分になってきます。

ここで、今回発見した苔の分類も調べてみましょう。
私が参照できる中でそれらしい情報源として『Illustrated Moss Flora of Japan Part 1』があります。
全編英語で書かれていてつらいのですが、頑張って読んでみましょう。
これによればナミガタタチゴケ(Atrichum undulatum)はautoicous = 雌雄独立同株、ヒメタチゴケ(Atrichum rhystophyllum)はdioicous = 雌雄異株だと記載されています。
また、ナミガタタチゴケには変種のムツタチゴケ(Atrichum undulatum var. gracillimum)がいるとも紹介されています。
ムツタチゴケは雌雄列立同株もしくは雌雄共立同株と記載されていました。

今回見つけた苔は植物体の頂点に雄花盤 = 造精器を付けているので雌雄異株と考えるのが妥当でしょう。
つまりナミガタタチゴケではないと言えそうです。

結局苔の正体は?

ナミガタタチゴケが候補から外れたとすると、ヒメタチゴケかコスギゴケあたりが候補になりそうです。

ページ上部の1枚目の写真をよく見ると、雄花盤のついてない植物体がいます。
葉を観察すると、中央だけが濃い色になっているためヒメタチゴケがそれらしいと思います。

今回は雌雄異株・雌雄同株について長々と調べていましたが、苔の名前については結構あっさりと分かりました。
ただ雄花盤を付けていないと区別が難しいですね…。

参考文献

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