「苔の観察には3段階ある。目視、ルーペ、そして顕微鏡である」
といったような言葉をどこかで見かけたことがあるのですが、ついに私も3つ目の段階に手を出してしまいました。
顕微鏡です。正確には生体顕微鏡です。
買おうか買うまいかとしばらく悩んでいた顕微鏡ですが、せっかく購入したのでこの機会に顕微鏡の紹介記事を書いてみようと思います。
なぜ顕微鏡が必要なのか?
端的に言うと苔を観察するためには高倍率の道具が必要になるからです。
といのも、ある種の苔を区別するためには細胞の形を手がかりにしなければなりません。
苔の細胞というものを観察するためには400倍~1000倍という倍率が必要となります。
ルーペやスマホのマクロレンズなどの倍率はせいぜい5倍程度です。
一部のルーペやマクロレンズでは「25倍」などといった表記も見られますが、これらの道具では倍率を面積比で表記することが多いため、一見すると大きな倍率となっています。
顕微鏡の倍率は「長さ」による比率を用いるので、一部のルーペやマクロレンズの倍率を顕微鏡と比較するには平方根を取る必要があります。
顕微鏡にはいくつか種類がありますが、苔の細胞を観察するためには生物顕微鏡を使います。
生物顕微鏡では試料の下から光を当てて透過光を使って観察します。
苔の葉の多くは薄く光を通すのでそのまま観察できますが、茎の断面などを確認する際には薄い切片を作成する必要があります。
このページでは生物顕微鏡のことを単に「顕微鏡」と表記しています。
実際に顕微鏡を用いて苔を撮影した写真や観察できる組織を紹介してみます。
次の写真はコツボゴケの葉を100倍(対物レンズ10倍×接眼レンズ10倍)で撮影したものです。
この程度の倍率になると、葉の周囲にある「舷(げん)」と呼ばれる組織や、葉の中心にある中肋、葉の輪郭のギザギザである「歯」と呼ばれる組織などが観察できるようになります。
苔によっては舷の細胞が何列あるか、目視では見づらい歯が存在しているか、といったことポイントになることがあります。
次の写真はコツボゴケの葉を400倍 (対物レンズ40倍×接眼レンズ10倍) の倍率で撮影したものです。
400倍ともなると、細胞の形まではっきりと確認することができるようになります。
苔によっては細胞の形の揃い方を確認したり、細胞にパピラと呼ばれる突起があるかどうかがポイントになることがあります。
顕微鏡の探し方
顕微鏡を探す際には、そよ風さんの顕微鏡観察のススメを参考にさせていただきました。
具体的には記事を読んでいただきたいところですが、結論としてはJIS規格もしくはDIN規格の製品を買うように案内されています。
また、苔の観察では倍率は400倍程度で十分と紹介されています。
規格に沿った製品を購入する利点としては、レンズ等を同一規格のものと交換できる点にあります。
例えばレンズは倍率が同じであったとしても、分解能が異なることがあります。
分解能の違いによって、試料をどこまで細かく観察できるかが変わってきます。
分解能が高い方がより細かく試料を観察できるのですが、その分レンズの価格が高くなります。
JIS規格やDIN規格の顕微鏡であれば、あとから倍率や分解能の高いレンズが欲しくなったとしても、レンズだけを交換することが可能であり、顕微鏡本体を買い換える必要がなくなります。
分解能に直結する要素としては、接眼レンズでは視野数、対物レンズでは開口数が大きく関わっているようです。
規格に沿ったレンズであれば、性能に関する数値が印字されているはずです。
顕微鏡の説明は、誠報堂科学館さんの生物顕微鏡の各部の説明や、Olympusさんの顕微鏡を学ぶなどで紹介されているのを見かけました。
詳細が気になる方はこちらも参照してみてください。
商品説明で規格が明示されていない製品や、「学習用」といった案内がされている商品はJIS規格やDIN規格に適合していないと言えるでしょう。
こういった商品はレンズ等の互換性を考えていないため、安価に製造できているのだと思われます。
またこういった商品は、たとえ倍率が高いとしても分解能を比較することが難しいため、苔の観察に適しているかは評価しづらいです。
(苔の観察に適している製品もあるのだろうと思いますが、判断基準がありません。)
私の買った顕微鏡について
今回私が購入したのはアーテックのE400です。
顕微鏡の調査をしていて初めて知ったメーカーなのですが、学校向けの用具や機材を扱っている会社のようです。
今回、私が顕微鏡を探した基準は主に以下の3点です。
- JIS規格もしくはDIN規格に適合していること
- 倍率は400倍以上
- 安価であること
私は、いかんせん顕微鏡の扱いに関する知識がなく(義務教育の中で使ったぐらいでしょうか?)、選び方も気にするべきポイントも分かりません。
なので今回は足切りラインを「規格品(JIS規格もしくはDIN規格)であること」、「倍率が400倍以上であること」と決めて、あとは価格で選ぶことにしました。
たとえ「失敗した」と思うことがあってもお財布へのダメージを最小限にする方針です。
この基準で探していて候補にあがったのはアーテックのE400とヤガミのYM-600でした。
いくつかの通販サイトで調べたところではE400がおよそ27,000円前後、YM-600がおよそ38,000円前後と1万円ほどの差があったのですが、購入当日にamazonでE400が14,000円ほどで販売されていることに気づき購入に至りました。
セールというわけでもないのに半額で販売されていて謎ですが、今のところは特におかしな点も見当たりません。
周辺機器
顕微鏡本体以外にも購入したものを紹介しておきます。
まず、私はスマートフォンでの写真撮影がしたいので、接眼レンズにスマートフォンを固定するアダプタを購入しました。
アダプタは望遠鏡向けとして売られていることが多いですが、接眼レンズの直径はおよそ3cmぐらいなので、この直径に対応していれば問題なく使えます。
また、顕微鏡での観察に必須となるスライドガラスやカバーガラスが付属していないのでこちらも合わせて購入しました。
スライドガラスとカバーガラスはとりあえず使えればいいや、という感じで安いものを購入しました。
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